転倒の減少、バランストレーニング、身体認識トレーニングはすべて、団塊世代(概ね1950年から1964年頃までに生まれた世代)や、多発性硬化症、パーキンソン病、神経障害などの慢性的な神経疾患を抱える人々にとって重要なテーマです。
片足でバランスを取れるということは、スキルであるだけでなく、歩くのに必要不可欠なこと。実際、片足で立つことができたからこそ、二足歩行が進化し、現在のような歩行が可能になったのです。
加齢やケガ、病気によって、片足で立つ能力は低下します。視力の低下、難聴、足裏の感覚の低下、神経系の鈍化などから、ふらつきが生じやすくなったり、足首が弱くなったり、また足の置き場に不自由を感じたりするようになります。
バランス力を鍛えるには、バランスマットのように不安定なエクササイズツールでのトレーニングが必須と考える人も多いかもしれません。
が、驚くなかれ、これは間違い! むしろシンプルに片足で立ち、目のエクササイズ(眼球運動)や認知タスク(別名 “デュアルタスク”)を行うことで、バランス感覚を効果的に向上させることが可能です。
今回の記事では、この眼球運動がバランス感覚にアプローチするだけでなく安定性を向上させる効果的な方法であることについても紹介します!
バランスと脳
眼球運動の影響力を理解するには、まず脳の奥深くにある大脳基底核(大脳皮質と視床、脳幹を結びつけている神経核の集まり)を理解する必要があります。
大脳辺縁系(情動の表出、意欲などの本能、喜怒哀楽、記憶や自律神経活動に関与)にある大脳基底核は、眼球運動などの小さな筋肉の動きと、歩行などの大きな筋肉の動きの両方を司る脳の一部です。ナボソ
大脳基底核におけるこの運動関係は、バランスを改善する効果的な方法であることが実証されています。で、バランスエクササイズと眼球運動を組み合わせ、6週間実施した結果、バランスエクササイズ単独よりも効果的にバランス感覚を改善することが分かりました。
眼球運動を取り入れることは、現在のバランス療法や転倒予防プログラムをより充実させ、グレードアップさせる素晴らしい方法です。これにナボソを組み合わせた簡単エクササイズで、効果的にアプローチしていきましょう!
ナボソ式バランスエクササイズ
まず裸足でナボソマットの上に立ち、ニューロボールやセンサリースティックなど手に何か持ちましょう。私たちはこれを“センサリースタッキング”と呼んでいます。エクササイズでは、手のひらと足裏がしっかりと刺激され、脳がより活動的になっていることを意識してみてください。ではスタート!
エクササイズ1「ヘッドターン」
片足立ちかタンデムスタンス(両足を前後に並べて立つ)で始めます。前庭系と視覚系の両方を刺激するために、頭を右と左にゆっくりと振ります。頭を振るときにどこか一点を見つめ、体幹に力を入れるとより効果的です! 片足(もしくは片足を前)で左右に2回ずつヘッドターンを行い、反対側の足でも同様に行いましょう。
エクササイズ2「アイトラッキング」
手にペンなどを持ち、手を動かして目でペン(その軌道)を追う方法と、頭を動かして目をペンに固定する方法の2パターン。どちらも目の動きに必要な筋肉を鍛えるのに効果的です。さらにバランス感覚を向上するために、両足の裏ともう片方の手のひらから刺激が入っているかを確認しましょう。5ラウンド行い、反対側の手も繰り返します。
エクササイズ3「サッケード」
これは最も効果的な眼球運動のひとつでもあります。片足または両足前後で立ち、頭を安定させたまま目だけを動かします。前を向いた姿勢から左側に目を動かせるところまで動かして、どこか一点を見つめます。そして直ぐに目線を右に動かし、そこで再び一点を見つめます。すぐにまた左を見て、という風に繰り返し10往復行います。
効果を高めるには、メトロノームなどを使ってテンポを保ち、視線を動かすたびに何かを見つけるようにすると良いでしょう。
エクササイズ4「周辺視野」
最後は私のお気に入りです。片足またはタンデムスタンス(両足前後)でスタートし、100メートルほど遠くを見ます。遠くの一点を見つめながら、周辺視野にあるすべてのものに注意を向けてみましょう。視線は動かさずに、見えたものを声に出してみます。15秒間キープし、反対側の足も同様に行います。
これらの眼球運動のうち、少なくともひとつかふたつを毎日行ってみてください。眼球運動に対する反応は人それぞれなので、まずはひとつの運動から始めてみて下さい。座った姿勢でもOKです。
バランスを鍛えるプログラムを組み立てる時のポイントは、神経系エクササイズが“優位”に立てるように調整すること。感覚的な刺激を与えたり、着圧ウェアや体の緊張を上手に使うと良いでしょう。
バランスを強化するエクササイズについては、ナボソのバランスボード「キネシスボード」を使った下記の動画もぜひ参考にしてみてください!
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