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脳の中の身体地図「ボディスキーマ」を、触覚リマッピングで改善する

「ボディスキーマ」とは、身体各部の空間的知覚のことを指します。

ボディスキーマを説明するために私がよく使う例です。混雑したレストランで、トイレに行くために椅子とテーブルの間を歩いているところを想像してみてください。ふたつの椅子の間隔を見て、その間を通れるかどうかを判断できるのは、ボディスキーマの能力によるものなんです。

私たちが外の世界を自由に動き回れるのは、空間における身体の脳科学的表象のおかげなのですが、このボディスキーマの変化を知覚できる正確さと速度は、加齢や脳卒中などの神経学的損傷を経験することで低下します。

脳がどのようにして身体の各部位の位置を把握しているのか、研究者たちはまだ解明できていませんが、触覚刺激がこのプロセスにおいて重要な役割を果たしていることが明らかになっています。

 

 

触覚リマッピング

触覚による刺激を感じたとき、身体のどこに刺激があったのか、その刺激に反応する動きに姿勢がどう影響を与えるかを知ることが重要です。

別の例を挙げましょう。友人と立ち話をしていると、手にくすぐったさを感じ、ふと見るとハエが止まっている。ハエを払いのけようとする反応は、手が身体の脇でリラックスしている時と、食べ物が乗った皿を持っている時とで違ってきます。

ここで何が起きているかというと、触覚刺激があると脳がその発生場所を認識し、手足の姿勢と向きを素早く判断して適切な運動反応を起こします。この一連の反応を“触覚リマッピング”といいます。

では、これを運動療法や脳卒中のリハビリにどう応用できるでしょうか?

手や足をいつもの決まった位置にある状態で触覚刺激について考えるのでなく、両手を交差させてどちらかの手に触れてみたり、地面についていない状態で足を刺激してみたり、目を閉じて皮膚を刺激したりして、脳に刺激を入れてみましょう。

 

ナボソブログ_脳の中の身体地図「ボディスキーマ」を、触覚リマッピングで改善する

 

 

脳の可塑性

リハビリに触覚リマッピングを取り入れることで、ボディスキーマと外部の世界との関係における身体の協調性をさらに高めることができます。この考え方は、神経可塑性に基づいています。

大脳皮質の機能は固定的なものではなく、むしろ動的であり、経験(=刺激)によって絶えず変化するものであることは、20年近く前から明らかになっています。慢性期の脳卒中からの自然回復はおそらく可塑性によるものであり、損傷した大脳半球の再生が、最良の回復をもたらすようです。

触覚による刺激は、脳の可塑性を高めるのにとても重要です。

 

 

“触覚リマッピング”を実践する

リハビリや治療に触覚リマッピングを取り入れる方法をいくつかご紹介します。


エクササイズ① 手を組む

このエクササイズは、触覚リマッピングにおいて最も研究されているもののひとつです。クライアントに目を閉じて両腕を前に組んでもらい、手のひらを上に向けたり下に向けたりを交互に繰り返します。
目を閉じたまま、片方の手のいろいろな部分に触れて、それが右手か左手かを答えてもらいます。強弱のある刺激や、2点識別覚(ナボソ独自のテクスチャー)、振動、軽いタッチなど、違った種類の刺激を取り入れてみることがポイントです。


エクササイズ➁ 足裏への刺激

足裏刺激というと、つい地面に足がついた直立の状態の姿勢を考えてしまいますが、さまざまな姿勢で刺激を与えることも必要です。
クライアントに、四つん這いになって片足を持ち上げたり、座って片足首を膝の上で交差させたり、さまざまな姿勢をとってもらいます。クライアントが足を見ていない状態で、その足裏に触れます。
どちらの足に触れているか聞く必要はありません。このように異なる姿勢で足裏に刺激を与えるだけで、触覚リマッピングが誘発されます。


エクササイズ③ さまざまな手の位置でボールをキャッチする

ボールをつかむ手を見ることで、同時に視覚的な情報のインプットも出来るエクササイズです。触覚刺激を高めるナボソのニューロボールを使うのもオススメです!

 

 

ボールを投げ返す運動反応には触覚のリマッピングが必要となるため、手の位置を変えながらボールをキャッチしましょう。さらにチャレンジしたいなら、反対の手を使ってキャッチするパターンも挑戦してみてください。

 

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今回ご紹介したエクササイズは、はじめて触覚リマッピングやボディスキーマを運動やリハビリに組み込む場合のほんの数例です。実際に取り入れる際には、体位や手足の動き、周りの環境は常に動的で、変化していることを忘れないでください。

既成概念にとらわれず、予測可能なパターンを作らないこと。変化こそが可塑性の原動力なのです。

 

 

 

 

 

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  3. 執筆:Dr. Emily Splichal
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