私たちが毎日行っている最も感覚的に複雑な動作が“歩行” であり、そしてその動作パターンを司る感覚的刺激が “重力” です。
肩にかかっているこの重力も、私たちが地球上にいることを神経システムに思い起こさせるだけでなく “身体意識” なるものを構築してくれています。
身体意識、または環境に対する自己意識は、空間で私たちのカラダを操縦する際にダイナミックに効率を最大化し、けがを最小限に抑える上でなくてはならないものです。
重力と全体としての身体意識
重力や身体意識、歩行の動的制御について考える時、私たちはカラダをより小さな部位や関節をもつ包括的な部位だと考えがちです。
カラダ本体には重心、カラダが安定する中心があり、L5/S1(腰椎の5番目と仙骨の間)のすぐ下、カラダの前面にあります。
重心が動くと、動作が生じ、これにより歩行の場合に動きが調整されることも、調整されずに転倒することもあるというわけです。
こうした動きが調整されるかどうかを決めるのは、重力との関係、また重心の動きの認識です。さらに言えば、この重力の認識や関係は、カラダ全体としてだけでなく各関節や局所的にも起こっているのです。
重力と局所関節位置覚
私たちの関節は、固有受容感覚と関節周りの組織の張力から重力を認識します。これを関節位置覚といいます。
関節位置覚は、簡単に言えば関節をコントロールする感覚です。関節自体を感じるだけでなく、関節の動きを認識できることが重要です。さらに、関節が動く速さ次第で関節をコントロールする力が決まります。簡単な例をみてみましょう。
関節位置覚と足首の捻挫
関節に特定した身体意識の一例に、地面に対する足と足首の認識、感覚があります。例えば縁石から降りるとき、正確な足の配置は、縁石の高さを感知する能力と足を下ろす際の加速、足首関節位置覚のタイミングに左右されます。足の感覚が遅れたり違えたりすると、踏み間違えたり足首を捻挫することも。疲労やケガ歴、年齢、靴は皆すべて、足の感覚や地面の認識の遅れに影響し得るのです。
重力感知と身体意識の向上
ナボソでは、運動障がいや慢性の神経学的状態(重力、カラダ、関節を認識する神経系の能力を大きく変える状態)を抱える多くの人たちと仕事をしています。
研究では、重心移動での遅延認識と転倒リスクの直接的な相関関係を示しています。動作の協調を強化し、こうした人々が転倒してしまうのを減らすための私たちの優先事項、最初のステップはまず彼らの全身の身体意識と局部ごとの関節位置覚を高めることです。これはつまり、重力の認識を高めるために、神経系に目を向けること。重力は圧力、張力、振動、であるということを忘れずに。
それでは、重力の認識と身体意識を高めるための方法、私たちのお気に入りを3つご紹介します。
重力感知スキル① 加重ベストと手首ウェイト
“加重ブランケット”の広告を見たことはありませんか? 不安を落ち着かせたり、よく眠れるようになると謳っているものです。
こうしたアイテムは「ここにいるよ!」と主張し、カラダとよりつながりやすいです。感知力の低い人にとって、この加えられた重さが
重力刺激の感覚値を上げるのに役立つのです。
研究によるとバランス障がいや脳卒中後、脊髄損傷のある人に加重ベストの効果が実証されています。同様に、手首ウェイトは歩行の際の重要な協調動作パターン、両腕のスイングを強化するのに役立ちます。
重力感知スキル➁ キネシオテープ&着圧ウェア
“キネシオテープ” がオリンピック選手の間で大流行したのを覚えていませんか? 現在では、関節位置覚を向上させることが実証されています。皮下筋膜や固有受容器への刺激を通して、キネシオテープは関節の動きの認識を速めるサポートをします。テープ同様、着圧も筋膜固有受容器を刺激することができます。
重力感知スキル③ 裸足への刺激と新“感覚”インソール
最後に、身体意識を高めるための最終にして最大のオススメ……それは、足への刺激です。
重力、カラダ、地面との相互作用はすべて動的な動きと直立姿勢にとって重要な要素。地面からの重力は、静的には圧力として、動的には振動として感知されますが、サポート力のある靴やクッション性のある靴は、足を通しての重力の感覚的な刺激を遮断します。
クッション性の高い靴からミニマルな靴に変えることで、この“感覚的ブロック”は多少マシになりますがそれでもまだ存在はします。そこで活躍するのが ナボソ テクノロジー! 感覚にアプローチするインソールです。
足から姿勢、バランス、歩行をサポートする
テクスチャーインソール
靴の内側に薄型のテクスチャーを入れることで、足への感覚的な刺激を高めます。
事実、2016年の研究では、このナボソのテクスチャーインソールをダンサーが使用し、足首の関節位置覚が向上したことが実証されました。
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身体意識と最適な動きにおける重力の役割について考えるならば、歩こうとしている赤ちゃんからアスリート、さらに脳卒中から回復した患者まですべての人にどのように適用できるかを考えなくてはなりません。
神経系、それは重力との関係によって形作られ、試され、定義される魅力的な構造です。